脈動変光星
星はその一生を終える段階に達すると、星自身の重力による収縮で、星の輻射エネルギーによる膨張とのバランスが崩れ、表層が周期的に膨張・収縮し始めます。脈動変光星とは、この周期的な膨張・収縮(脈動)によって変光する星のことです。
また、星は縮んだ時に明るくなり、膨らんだときに暗くなります。星が縮むと内部の圧力が高まり、星の燃焼(核融合反応)が活発になるからです。

周期は数十日から数百日のものが多いです。

脈動変光星は、その変光のメカニズムや光度曲線の違いにより、ミラ型(M)、半規則型(SR)、おうし座RV型(RV)、ケフェウス座δ型(DCEP)に細分類されます。


ミラ型(M)
くじら座ο星ミラに代表される長周期変光星の一種です。
変光範囲が2.5〜11等と大きく、周期は100〜500日、スペクトル型はM、C、S型が一般的です。
晩期の赤色巨星が多く属し、老齢期を迎え不安定となった星が収縮し、その大きさの変化によって明るさが変化します。変光周期が長く、非常に規則正しい変光をするので、数日に1回のペースで長期間観測するのに適しているといえます。
また、光度が明るく、変光範囲も大きいため発見が容易で、これまでに約6000個発見されています。

□ 代表的な星
名称 変光範囲 周期 星図
R Cas カシオペア座R星 4.7-13.5V 430.46日 M AAVSO
ο Cet くじら座ο星 2.0-10.1V 331.96日 M AAVSO
χ Cyg はくちょう座χ星 3.3-14.2V 408.05日 M AAVSO
R Hya うみへび座R星 3.5-10.9V 388.87日 M AAVSO
R Leo しし座R星 4.4-11.3V 309.95日 M AAVSO
U Ori オリオン座U星 4.8-13.0V 368.3日 M AAVSO
R Tri さんかく座R星 5.4-12.6V 266.9日 M AAVSO

□ 代表的な光度曲線(出典:VSNET)


半規則型(SR)
変光範囲が1〜2等、周期は20〜2000日程度、スペクトル型はF-S型の晩期の巨星や超巨星が属します。ミラ型のように周期的な変光を示しますが、ミラ型よりも周期や光度が不規則で、変光範囲も小さいのが特徴です。
規則性の大きなものから順番に、SRA型、SRB型、SRC型、SRD型と細分類されます。

□ 代表的な星
名称 変光範囲 周期 星図
ρ Cas カシオペア座ρ星 4.1-6.2V 320日 SRD AAVSO
μ Cep ケフェウス座μ星 3.43-5.1V 730日 SRC AAVSO
RS Cnc かに座RS星 6.2-7.7P 120日 SRC AAVSO
X Cnc かに座X星 5.6-7.5V 195日 SRB AAVSO
T Cet くじら座T星 5.0-6.9V 158.9日 SRC AAVSO
W Cyg はくちょう座W星 6.80-8.9B 131.1日 SRB AAVSO
η Gem ふたご座η星 3.15-3.9V 232.9日 SRA+EA AAVSO
RX Lep うさぎ座RX星 5.0-7.4V 60日 SRB -
W Ori オリオン座W星 8.2-12.4P 212日 SRB AAVSO
ρ Per ペルセウス座ρ星 3.30-4.0V 50日 SRB AAVSO
Z UMa おおぐま座Z星 6.2-9.4V 195.5日 SRB AAVSO

□ 代表的な光度曲線(出典:VSNET)


おうし座RV型(RV)
変光範囲が2〜4等、周期は30〜150日、スペクトル型はF-K型の超巨星に属します。
この型の一番の特徴は、1周期の間に主極小と副極小が交互に現れるという、非常にユニークな変光を示すことです。また、ときどきこの極小の順番が入れ替わることがあり、この現象は全く不規則に起こります。
この型は、光度変化が常に一定な型をRVA型、光度変化が二重な(平均光度が変化する)型をRVB型と細分類されます。

□ 代表的な星
名称 変光範囲 周期 星図
AC Her ヘルクレス座AC星 6.85-9.0V 75.01日 RVA AAVSO
U Mon いっかくじゅう座U星 6.1-8.8P 91.32日 RVB AAVSO
R Sct たて座R星 4.2-8.6V 146.5日 RVA AAVSO
RV Tau おうし座RV星 9.8-13.3P 78.731日 RVB AAVSO

□ 代表的な光度曲線(出典:VSNET)


ケフェウス座δ型(DCEP)
ケフェウス座δ星に代表される型で、セファイドとも呼ばれます。
絶対等級が比較的大きく、スペクトル型がF-K型の、主に巨星や超巨星に属する周期的脈動変光星です。
また、変光範囲は1〜2等、周期は2〜50日ほどです。

この型の変光星には変光周期が長い星ほど絶対等級が明るいという性質があり、これを『周期光度関係』と呼びます。この関係を用いると、変光周期を測定することから絶対等級を導き出すことができ、見かけの等級と比較することによってその星までの距離を測定することができます。
このことから、ケフェウス座δ型変光星は『宇宙のものさし』と呼ばれ、様々な天体の距離を測るのに用いられてきました。実際に、アンドロメダ銀河までの距離は、1923年エドウィン・ハッブルによって、その中に含まれているケフェウス座δ型変光星を用いて測定されました。ちなみに、方位の北を知るための目印としておなじみの北極星もこの型の変光星です。

□ 代表的な星
名称 変光範囲 周期 星図
η Aql わし座η星 3.48-4.39V 7.176641日 DCEP -
δ Cep ケフェウス座δ星 3.48-4.37V 5.366341日 DCEP AAVSO
ζ Gem ふたご座ζ星 3.62-4.18V 10.15073日 DCEP -

□ 代表的な光度曲線(出典:VSNET)


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