食変光星
複数の星が引力を及ぼし合って、お互いのまわりを回っている天体を連星といいます。 連星が恒星である場合、星が隠れたり表れたりすることで見かけ上の光度が変わります。これが食変光星の変光のメカニズムというわけです。

地球から見て、明るい方の星(主星)が暗い方の星(伴星)を隠すときを副極小(第二極小)と呼び、全体としての光度はやや暗くなります。逆に、暗い方の星(伴星)が明るい方の星(主星)を隠すときを主極小(第一極小)と呼び、全体としての光度は最も暗くなります。

大事なことは、1つの星とみなして観測していても、実際には2つの星であるということです。
食変光星の周期は短いものが多く、中には数時間で変光するものもあります。

食変光星は、その変光のメカニズムや光度曲線の違いにより、アルゴル型(EA)、こと座β型(EB)、おおぐま座W型(EW)に細分類されます。


アルゴル型(EA)
食のとき以外は光度変化が起こらない型で、平常光度ははっきりしているのが特徴です。 この型の連星系は、星同士が比較的離れています。

□ 代表的な星
名称 変光範囲 周期 星図
RZ Cas カシオペア座RZ星 6.18-7.72V 1.195247日 EA/SD AAVSO
AI Dra りゅう座AI星 7.05-8.09V 1.1988146日 EA/SD AAVSO
δ Lib てんびん座δ星 4.91-5.90V 2.3273543日 EA/SD AAVSO
β Per ペルセウス座β星 2.12-3.39V 2.8673043日 EA/SD AAVSO

□ 代表的な光度曲線(出典:VSNET)


こと座β型(EB)
星の表面の明るさが一定ではなく、アルゴル型のような平常光度は存在しません。
これは、連星がかなり接近しているため、星の形が楕円になっていることや、片方の星がもう片方の星を照らす反射効果が起こるためです。

□ 代表的な星
名称 変光範囲 周期 星図
β Lyr こと座β星 3.25-4.36V 12.913834日 EB -
V1010 Oph へびつかい座V1010星 6.1-7.0V 0.66142613日 EB/KE -

□ 代表的な光度曲線(出典:VSNET)


おおぐま座W型(EB)
同じくらいの大きさの星による接触した連星系です。
そのため、星は完全に楕円形になっていて、共通の大気を持っています。
主極小と副極小の差が小さく、滑らかに光度変化をし、食と食外の区別がはっきりしません。
また、短周期の星が多い型です。

□ 代表的な星
名称 変光範囲 周期 星図
i Boo うしかい座i星 5.8-6.40V 0.2678159日 EW/KW -
W UMa おおぐま座W星 7.75-8.48V 0.33363749日 EW/KW AAVSO

□ 代表的な光度曲線(出典:VSNET)


極小観測について
極小観測とは、食変光星の極小の様子を観測することです。
この観測の目的は、極小時刻の計算値と実際の観測値の差である『O-C』の値を求めることにあります。『O』とは、観測で求められた極小時刻(observation)のことで、『C』とは、計算で求められた極小予報時刻(calculation)のことです。この差がO-Cとなり、O-Cの値から、その食変光星の周期のズレを求めることができるのです。O-Cを何回も測定することにより、その星にどのような変化が起こっているのかを推測することができます。

O-Cを求めることは、眼視観測でも十分可能なため、アマチュア変光星観測者にとって重要な研究分野といえるでしょう。また、数時間の観測で立派な光度曲線が描けることや、星の変光する様子を簡単に体験できることも極小観測の魅力です。
なお、食変光星については、永井和男さんのホームページで詳しく紹介されているので参照してください。→こちら

O-Cの値はユリウス日(JD)で表します。ユリウス日とは、紀元前4713年1月1日世界時正午を基点とした通日のことで、主に天体の軌道計算や変光星の観測に用いられます。

明治大学天文部変光星班では、主にRZ-Cas(カシオペア座RZ星)とβ-Per(ぺルセウス座ベータ星、アルゴル)を観測しています。これまでの観測結果は、 変光星観測データを参照してください。


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